Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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スウィスにっき

スウィス日記

辻村 伊助

Lesen Sie スウィス日記 (スウィスにっき) von 辻村 伊助 (つじむらいすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 216.275 Zeichen · 410 Bildschirme

Aozora Bunko

この六年の間遠く故郷に離れていた妻は、今再び、彼女を生み彼女を孚んだアルプスの連嶺に迎えられる喜びを子供達に分けようとする様に、頬ずりしながら山を指す姿を見ると、私は寥しくなってゆくばかりだ。父として夫として私は、彼等を見守っているが、しかしあの山頂をかすめて風に吹かれる雲のように、心は、ともすれば雲の上をさまようておる。家族と共に居れば独り離れて山を思い、山に入れば却って麓に残した家族を想うのではあるまいか。私にはあの前の独り旅がたまらなくなつかしい。何の羈絆も拘束もなく、興に乗じては嶺から嶺を渡り歩いて、山で死ぬ日をすら美しく脳裏に画いた若い日は、もう私には再び帰って来ないのか……。子を膝にのせて山を見ている妻をいじらしく又尊く私は感じた。そして同時に、裏切るような不純な自分を、山も亦人も思うままに愛し得ない自分を、つくづく情なく感じたのである。

窓外の景色はいくたびか変って、青葉に包まれた町や村が眼まぐるしく走った、そし尚幾つかの停車場を数えるのさえ、帰郷を急ぐ妻には耐らなく待ち遠しかった。子供達まで好奇の眸を光らして幾度も窓から首を出しては母親に叱られている。