Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せかいかいきじつわ「じょぶん」

世界怪奇実話

牧 逸馬

Lesen Sie 世界怪奇実話 (せかいかいきじつわ「じょぶん」) von 牧 逸馬 (まきいつま) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 251.305 Zeichen · 498 Bildschirme

Aozora Bunko

その傍に、今子供に飲ませようとしていたかのように、咳止め薬の壜が置いてあった。そのコップも、細長い薬壜も、ちゃんと立っているのだ。しかも、気のせいか、オウトミイルや玉子は、まだ幾らかあたたかみが残っていたようだと言われているが、これは後日、一般に論議されて、ボイス船長らの錯覚であろうということになったけれど、しかし考えてみると、洗濯物から滴水が垂れていた位いだから、朝飯が冷え切っていなかったとしても、別に不思議はない訳である。こうして食卓が其の儘になっていて、倒れ易いコップや薬壜が立っていたという事実だけで、極く最近まで人がいたことが肯定される。十二月の大西洋は決して凪続きということはない。長らく無人の船なら、船の動揺で、それらの食器は卓子から滑り落ちるか、尠くともコップと薬壜だけは倒れていなければならない筈だ。のみならず、炊事場には、朝飯の残りが鍋にそのままになっていて、料理人のらしい使いかけの剃刀が一丁、刄に一杯短い剃毛を附けたまま炊事台の上に抛り出してあった。船長の寝室と思われる一室には、覆いを取ったミシン台があった。台の上に、円い指抜きが、胴を下に転がり落ちずに載っている。