Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
第三話
一
蝶太夫の身許はまもなくわかったが、おりうという娘は、身許も行方も知れなかった。
第三話
一
「もう済みました」と海野得石が云った、「起きて支度をお直しなさい」
診察用の夜具の上に仰臥しているその女は、小袖の衿で胸乳を隠したまま、はだかっている下半身には気もつかないようすで、いかにも満ち足りたように、静かな深い呼吸をしていた。
「さあ、風邪をひきますよ」
得石は手を拭いてから、左右にひろげてある小袖の裾をひき掛けてやった。女は恍惚と溜息をつき、細く眼をあいて彼を見た。
「軽くなったでしょう」と得石が訊いた。
女は眼で頷いた、「おかげさまで」
「痛んだらまたいらっしゃい」と得石は云った、「私は病家へみまいにゆかなければならない、いま家人に薬を持たせてよこします」
得石は女を残してその座敷を出た。
中廊下を隔てた薬部屋を覗くと、妻のおくにが薬研にかかっていた。彼と三つ違いの三十五歳であるが、四十歳より下とみる者はないだろう。髪の毛が少ないので髷も小さく、血のけのない乾いた皮膚や、平たい胸や、肉のそげたような腰など、ぜんたいが干からびて縮んだようにみえる。顔だけは角ばって大きく、尖った頬骨と、落ちくぼんでいながらとび出しているような感じのする眼つきとが衰えた躯つきとは不調和なほど精悍な、ねばり強さと逞しさを示していた。