Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
第四話
一
死躰は四帖半の夜具の中にあった。掛け夜具がはねてあり、寝衣がはだけて、あらわになった胸の左の乳の下に、銀の平打の釵が突き刺さっていた。
「枕許に血がとんでるな」と町役の一人が云った。
「いや、血じゃあない」とひらのの主人が覗きこんで首を振った、「これは椿の花片だ」
「死躰の枕許に椿の花片が一枚……」ともう一人の町役が、上眼づかいに唇を舐め、首をひねった、「どこかで聞いたことがあるようだな」
第四話
一
「銀の平打の釵」と青木千之助は呟いた、「片方は裏梅の彫りで片方は花菱だった、注文して打たせたものではなく、小間物屋で買った品だろう」
早くとばしている駕籠が揺れるので、あぐらをかいた膝のあいだに抱えている刀の鍔がうるさく顎へ当るため、千之助は無意識に顔を脇へそらした。刀のぐあいを直すほうが簡単なのだが、考えごとに頭をとられていて、そんなことにさえ気づかないようすであった。
「下手人は一人だ」とまた彼は呟いた、「寝床へいっしょに引入れてから、釵で心臓を一と突き、手口は二度とも符節を合わせたように同じだし、おまけに死躰の枕許に赤い山椿の花びらが一枚、――どっちも女だというから、下手人がその女だということに紛れはないだろう」