Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
隣り座敷の娘は火鉢へ片手をかざし、片手に本を持って読んでいた。こちらからは斜めに横顔が見えるが、ちょっと憂いのある、おとなしそうな顔だちで、しんと坐った姿勢も、静かに本を繰る手つきも、優雅におちついていて、どう見ても大店の奥に育った箱入り娘、というふうにしか思えなかった。
――これは違うな。
どう考えても人を殺すようにはみえない。壮年の男を二人まで殺したとすれば、どこかにそういうものが感じられる筈である。与力として幾十人となく罪人に接して来、中にはずいぶん眼外れな例もあったが、罪を犯した人間と無実の人間とは、ふしぎなほど直感で判断がつく。無実な人間を誤認することはあっても、罪を犯した人間を見誤るようなことは殆んどなかった。
――これは人殺しのできるような娘ではない。
千之助はそう考えながら、ふとまた、「その箱入り娘がこんなところで男を待っている」ということに気づいた。こんどの殺しそのものが尋常ではない、「釵」と一枚の「花弁」という取合せ、またどっちの男も行状が悪かったこと、下手人と思われるのが、どちらも女であったことなどを、改めてなぞるように思い返した。