Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
年はもう三十五になるが、肉躰的な快楽以外にはなんの関心もなく、精神的には十五、六歳のまま成長が停っているようだ。男ぶりはいいほうだし、「香屋」は札差なかまでも指折りの資産家だから、女たちや取巻きに不自由はなかった。
――私は一人っ子だ。
彼はいつもそういっていた。
――勘当になっていたって、おやじが死ねば香屋の主人は私だ。
そんな気持だから、身持を直そうなどと思ったことはない。勝手なことの仕放題で、困ると母親にしりぬぐいをしてもらった。自分の家にいたころは外で遊ぶだけではなく、女中でも下女でも、触れる者に手を付けた。近所の鳶の女房と不始末をしたのが勘当された原因であるが、その癖はいまも直らず、遊女や芸妓たちをべつにして、料理茶屋のおかみから、ちょっと眼につく女中などに、隙をみてはちょっかいを出すというふうであった。
放蕩者でも金ばなれがいいとはきまらないだろうが、彼は徹底した自己中心で、自分の快楽に対してしか決して金は使わないし、使いぶりも吝嗇に近いほどしみったれていた。それでも女や取巻きたちがはなれないのは、母親から仕送りがあるのと、「香屋」の名にひかされてのことだろう。