Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme

Aozora Bunko

振り返ってみるとおそので、菊ちゃんは寝ちゃったよ、と云いながら喜兵衛の姿を認めて、眸子を凝らした。

「誰かいるじゃないの」おそのはよろよろとなった、「そこに寝ているのは誰」

「お父つぁんよ」

「ばかにおしでないよ」おそのはくくと笑った、「あの病人がここへ来られるわけがないじゃないの、誰なのさ」

そこでおそのは絶句した。眼が裂けるかと思うほど大きくみひらかれ、下顎がさがって空洞のように口があいた。

「お父つぁんよ」とおしのが静かに云った、「おっ母さんに会ってひと言だけ云いたいことがあるって、戸板でここへ運んで来たの、途中で息を引取ったけれど、おっ母さんに会いたいというのが遺言だったから、そのままここへ運んで来たのよ」

「死んでるって」とおそのは舌が痺れたような口ぶりで呟いた、「――死んでいるの」

「お父つぁんの死骸よ」

おそのは「ひ」というような声をあげて、よろめきながら逃げようとした。おしのはとびあがり、母の腕をつかんで引止めると、力任せに父の枕許へと押してゆき、そこへ母を坐らせた。

「放して」とおそのは身をもがいた、「きびがわるいじゃないのよ、放しておくれ」