Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme

Aozora Bunko

喜兵衛の声が、耳のずっと奥のほうで聞えた。

――これを云わずには死にきれない。

おしのは剥きだした歯のあいだから、誰かに秘密を告げるような口ぶりで、そっと囁いた、「知ってたのね、お父つぁん」そしてまた囁いた、「みんな知ってたのね」戸板に乗ってでも寮へゆき、ひと言あれに云ってやらなければ、死んでも死にきれない。これまでついぞみせたことのない、執念のようなあのときのようすは、それを「知っていた」ということを明らかに示すものだ。

父は知っていたのだ、とおしのは思った。あたしが父の子でないということを。よく知っていながらなにも云わず、実の子のようにあたしを可愛がってくれた。

「あたしのために」とおしのは囁き声で云った、「いつかむさし屋を出ていっしょにくらそうと、お金まで溜めていてくれたわ」

おしのはぎゅっと眼をつむった。

「やるわ、やってやるわ」暫くしておしのは呟いた、「これは女というものぜんぶのためよ、女ぜんたいの恥だわ、女ばかりじゃない、人間のぜんぶを汚したことだわ、――これがこのままそっとしておかれていい筈はないわ、この償いは誰かがしなければならない、こんな、人間ぜんぶを辱しめるようなことを、放っておいていいわけはないわ」