Japanische Klassiker mit Furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Lesen Sie 五瓣の椿 (ごべんのつばき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.721 Zeichen · 296 Bildschirme
蝶太夫はかしこまって、両手を膝へ突張り、うなだれた頭をぐらぐらと、張子の虎のように振っている。顔は蒼黒く、筋がたるんで、唇の端から涎が垂れるのを、ときどき思いだしたように、右手の甲で横撫でにしていた。むささびの六は大あぐらをかき、左手に持った飯茶碗の酒を、ちゅうちゅうと音をさせて、さもうまそうに啜りながら話していた。
「もう辛抱がきれた、ってえわけだ」と六は云った、「おれがへえって来たとき、このくれえの風呂敷包みを拵れえていたっけ、あら、六さんじゃないの、っていうわけさ、それからいきなりお面へ来たね、いきなりだ、あたしはこのうちを出ていきますからってよ」
「辛抱がきれたって」と蝶太夫がとぼんと云った、相手に訊くというのではなく、自分に問いかけるような口ぶりで、そうして、それから眼をあげて六を見た、「――おめえいつ来たんだ」
「なんど訊くんだ、昨日の午さがり江戸へ着いて、ゆうべは三番町の織田さまの仲間部屋へ泊り、今日の午めえにここへ来たんだ」と六は云った、「するとお由さんがいま云ったとおりの愁嘆場よ、酒の支度をしてくれながら、そうだ、愁嘆場じゃあねえ、からりしゃんとしたあいそづかし、まったくのところあいそづかしだ、おい師匠、――おめえいいいろができたんだってな」