Japanische Klassiker mit Furigana
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めいきょくけっていばん
名曲決定盤
野村 あらえびす
Lesen Sie 名曲決定盤 (めいきょくけっていばん) von 野村 あらえびす (のむらあらえびす) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 344.837 Zeichen · 680 Bildschirme
私は日本を訪ねたあらゆる音楽家を聴いたつもりだが、ピアニストでは、後にも前にもケンプほど親しみを感じた人はなかった。一つはこの人の質朴な風采から来る親しみであったかも知れないが、少し前屈みに、ピアノへ噛り付くようにして、本当に心から打ち込んだ様子で、少し無器用にぼっとりぼっとり弾いて行く姿は、どう考えても冷たいヴァーチュオーソではなかった。
弾いてるうちに、ケンプの頬は次第に紅潮し、感興と共に、その指は滑らかに動いて行った。野村光一氏が、「ケンプはコーダがうまい」と言ったのは、さすがに慧眼で、弾き進んで曲の終りに近づくと、燃焼し切った感興と情熱のやり場に、ケンプは困っているのではあるまいかと思うほどであった。技巧的にはあまり優れていると思えず、それに発火点の遅い鈍重な感じのするケンプに取っては、曲の終りこそ、最も精神こめた演奏の出来るところであったのだろう。
弾き了って立ち上るケンプの顔は、赤ん坊のように歓喜に輝いていたのを、みんなは見た筈である。どうかしたら、涙を浮べていたかも知れない。それほどケンプは、曲に打ち込んで、陶酔し切った心持で弾くアーティストだったのである。