Japanische Klassiker mit Furigana
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やまとこじふうぶつし
大和古寺風物誌
亀井 勝一郎
Lesen Sie 大和古寺風物誌 (やまとこじふうぶつし) von 亀井 勝一郎 (かめいかついちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 108.647 Zeichen · 215 Bildschirme
云わば太子の信仰は、己が一切を犠牲とし、そうすることによってはじめて不朽の悲願を残すごとき無償の行であった。太子は申すまでもなく、山背大兄王やその若き御子達には、果さんとして果しえなかった無念の思いがあり、不如意のいのちの嘆きは最後の日まで止むことはなかったであろう。高貴なる血統に宿った凄惨な悲劇を、御一族は身をもって担い、倒れたのであるが、この重圧からの呻吟と歔欷の声は、わが国史に末長く余韻して尽きない。後代人はこれに触れ、愕然として更に激しく太子を慕うのである。
その後、新装成った夢殿の、新しい八角の厨子に救世観音を拝するたびに、私はそこに陰翳する上宮王家の無念の思いと悲願を感ぜずにはおれないのである。私が前に述べた原始人のごとき不思議な生気は変らないが、金色の肌の光りは、ほの暗い御堂に在って更に異様であった。たとえば闇の底に蹲ってかすかに息づいている獅子、或は猛虎の発散するエネルギーと香りを感じさせる。私にはそれが復讐の息吹のごとくにも思われ、また荒々しい捨身への示唆のごとくにもみえた。しかしすべてを超えて、その口辺に浮んだ微笑は太子の御霊の天寿国に安らい給うしるしなのであろうか。