Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

の歌が、陰に響けば雨が降る。

「今夜はこの宿でお泊りが分別でござりましょうがな」

老爺は忠告とも独言ともつかないようなことを言って、また坐り込んで火縄にかかる。

草鞋を穿き終った竜之助は、笠越しに空を見上げているところへ、

「さあ御新造、ここが抜け道の茶屋で」

威勢よく店前へ着いた一挺の駕籠、垂を上げると一人の女。

「お浜!」

竜之助は僅かにその名を歯の外には洩らさなかったけれども、この女の名が浜でなければ不思議である。それとも竜之助の眼には、すべての女の面がお浜のそれに見えるのかも知れません。

「駕籠屋さん、どうも御苦労さま」

竜之助は眼をつぶってその姿を見まいとした、耳を抑えてその声を聞くまいとした。あれもこれも生き写し。

女は駕籠から出て、

「駕籠屋さん、どうも御苦労さま」

と言いながら帯の間を探ってみて、ハッと面の色を変え、慌しく懐や袂に手を入れて、

「まあどうしましょう、ちょっと駕籠の中を」

隅々を調べてみて当惑の色はいよいよ深く、

「駕籠屋さん、済みませんけれど」

二人の駕籠屋は突立ったなり、左右から女の様子をながめていたが、

「何だえ御新造」

「連れの人がほどなくこれへ見えますから、少しのあいだ待っていて下さいな」