Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠1

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

「まことに、お恥かしゅうございます。それではあなた様には、何もかも」

「いや、何もいっこう知りませぬが、そなた様だけはこの世にない人と思っておりました」

「生きて生き甲斐のない身でございます、お察し下さいませ」

お豊は、ハラハラと涙をこぼして言葉もつまってしまったのであります。

それを気の毒と見たか、哀れと思ったか竜之助は、

「縁あらば詳しいお身の上を聞きもし語りもしましょう。して、そなた様は今どこにおられます」

「はい、この土地の薬屋と申す旅籠屋が伯父に当りまして」

「はあ、薬屋……拙者はこの植田丹後守の邸におります」

そのまま竜之助はサッサと楼門の方をさして通り過ぎてしまいました。

お豊は思いがけぬところで、思いがけない人に会い、思いがけない言葉を浴びせられて、しばらくなんだか夢中になってしまいました。

何という素気ない人であろう! 気がついて見ると竜之助は、第二の石段をカタリカタリと下駄の音をさせながら、わき目もふらず祓殿の方へと下りて行きます。

八

関の宿で悪い駕籠屋に苦しめられたのを見兼ねて追い払ってくれた旅の武士はあの人であった。