Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme
十九
伊賀の上野の鍵屋の辻というのは、かの荒木又右衛門が手並を現わした敵打ちの名所。
その鍵屋の辻に近い吉田屋という旅籠屋の一室に、机竜之助は、まだ袴も取らないで柱によりかかっている。
襖一重の次の間で、
「拙者は、田中新兵衛の仕業に相違ないと思う」
「いや、拙者はそう思わぬ、田中はそんな男でない」
田中新兵衛という名。京都へ上るときに大津を出て、逢坂山の下の原で、後ろから不意に呼びかけて自分に果し合いを申込んだ薩州の浪人がそれだ。
「田中でなくば、あれだけのことはやれぬ、第一、証拠がある」
「いやいや、田中なら、あんなことはやらぬ。刀を捨てて逃げるような慌てた真似をするものでない」
「というて、その刀は田中のほかに持つべき品でない」
「さあ、それが拙者にも解せぬ、田中はなんとも言わず腹を切ったことだから、どうも解らぬわい」
「申し開きをせず腹を切ったことだから、言わずと当人罪に落ちたものじゃ」
「そうとも言い切れぬ、何かその間に……拙者もよく知っているが、あの田中という男は人を斬ったこと幾人か知れぬ、人を斬ることは朝飯前と心得ている、近頃は仕事がなくて腕が鳴る、誰か斬る奴はないかと人斬りを請負って歩くほどの男じゃ」