Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠1
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠1 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.314 Zeichen · 398 Bildschirme
「あれ――」
と飛びのいたが、気丈な子でした、すぐにあり合わす木の枝を拾い取って振り上げると、猿どもは眼を剥き出し白い歯を突き出してキャッキャッと叫びながら、少女に飛びかかろうとして、物凄い光景になりましたが、折よくそこへ通りかかった旅の人があります。
年配は四十ぐらいで、菅笠をかぶって竪縞の風合羽を着、道中差を一本さしておりましたが、手に持っていた松明の火を振り廻すと、今まで驕っていた猿どもが、急に飛び散らかって、我れ勝ちにもとの栗の大木へと馳せ上ります。
旅に慣れた証拠は、この旅人の持っている松明でわかります。大菩薩を通るものは獣類を逐うべく、松の木のヒデというところでこしらえた松明を用意します。獣類のなかでも猿はことに火を怖れるものであります。右の旅人はその松明を消しもせず、
「姉さん、怪我はなかったかね」
近く寄って見て、
「おやおや、人が斬られている!」
少女を掻き分け死骸へ手をかけ、その斬口を検べて見て、
「よく斬ったなあ、これだけの腕前をもってる奴が、またなんだってこんな年寄を手にかけたろう」
旅人は歎息して何をか暫らく思案していたが、やがて少女を慰め励まして、ハキハキと老爺の屍骸を押片づけ、少女を自分の背に負うて、七ツ下りの陽を後ろにし、大菩薩峠をずんずんと武州路の方へ下りて行きます。