Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
ところが、碓氷の分水嶺を一足すぎて、この浅間の麓へ眼をやると、なんと寂しい、すべての草木の凋れた姿であろうか。穂に出た芒は、枯れて西風に靡いている。路ゆく人の襟巻は、首に深い。落葉松はもう枯林となって、遠く野の果てに冬の彩を続けている。
空は蒼く、真昼の陽は輝いている。上州では高い空に白い浮雲をみたのに、信州へはいっては一片の雲もみない。その明るい陽に照らされて、浅間山の中腹から、前掛山の頂かけて茜さすのは秋草の霜にうたれた色であるかも知れないと思う。それに連なって裾野の方へ、緑に広く布いてみえるのは、黒松の林ではないであろうか。
しかし、ひとたび深い雲を催せば、雨がくるのではあるまい。もう雪が降ることであろう。そんな想像をめぐらしているうち、三十年近くも過ぎた昔、私はこの蕭条たる枯野が真っ白に包まれた雪の上を、東から西へ向かって歩いて行ったことが頭へ浮かんできた。
いや、ほんとうはこうして二人から離れ、私ひとり窓のそとの景色に忽焉としているというのは、そのときのわが姿を、なん年振りかで眼に描いて、なつかしみたかったからである。若き日のわが俤が汽車の窓のそとを歩いている。