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Japanische Klassiker mit Furigana

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たぬきじる

完本 たぬき汁

佐藤 垢石

Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme

Aozora Bunko

すっぽんの濃羮は、昔から美食の粋として推されている。ところが、私の少年のときの思い出は、大しておいしいものではなかった。私が十二、三歳の頃であったであろうと思う。夏の出水の跡に、村の川の橋普請があった。私の父も、村の役人として普請の監督に出ていたが、ある日古い石垣を組み直すとき、土方が一匹の大すっぽんを捕らえた。その夜、この大すっぽんを私の家へ持ってきて、すっぽん汁をこしらえ、これを炉の自在鍵に吊るした大鍋から、十数人の村人が五郎八茶碗に掬って、おいしそうに啜った。そして、雲助のような髭面に、濁酒の白い滓をたらし、あかい顔で何かわめいていた人達の姿が、いまでも私の眼の底に残っている。私にも一碗だけが裾分けとなったのである。だが、甚だおいしくなかった。泥の臭みが鼻をついて、

『こんなのなら、物欲しそうな顔などするのではなかった』

と、悔やんだのである。そんな古い記憶があったから、その後長い間、すっぽんの食味に興を惹かなかったのであるが、先年京都千本通りの大市ですっぽんの羮を食べたとき、はじめて、

『なるほど』

と思った。

それに味をしめて、それからは東京であっちこっちとすっぽん専門の割烹店を尋ねて歩いたけれど、料理の方が拙いのか、材料が劣っているのか、京都で得た味覚とはまことに比較にならない。