Japanische Klassiker mit Furigana
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たぬきじる
完本 たぬき汁
佐藤 垢石
Lesen Sie 完本 たぬき汁 (たぬきじる) von 佐藤 垢石 (さとうこうせき) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 133.158 Zeichen · 273 Bildschirme
仏をだます者は、碌な者になれぬと言いながら、もう余ほど前に檀家の法事へ出て行った』
と、いったような意味のことを突っけんどんに言い払って、ぶっきら棒に奥へ引き込んでしまった。私は呆気にとられた。
私は、私の身はもう生甲斐がないと思った。生きて行けないと思った。寺の門を、しょんぼりと出ながら、淀川の鉄橋の上を物凄い軋みを立てて走る電車の突進するさまを眼に描いた。死ぬには、電車がひと思いでいい。
今夜が、この世との別れだ。それにつけて、一期の思い出に酒を飲もう、と考えた。八幡の町へ出て、古着屋の前へ立った。鞄の中には、母が故郷から送ってきた手織の袷と兵子帯が入っていた。毛布もある。持物すべてを買って貰った。古着屋の主人は、母の心尽くしの袷を、汚らしそうに、指先で抓みあげた。それが、私に悲しかった。
酒を一升買った。ひる間ひる寝をした堤の上へ一升壜を下げて行った。これも飲み終わったなら、静かにこの世に暇を告げよう。私は酒屋で貰った味噌をなめながら、茶碗酒をあおった。
眼が覚めたら、私は暁の堤の草の上にまだ生きていた。みやこ鳥が、ゆるゆると淀の川瀬に泳いでいる。