Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふじょう
恐怖城 他5編
佐左木 俊郎
Lesen Sie 恐怖城 他5編 (きょうふじょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 143.735 Zeichen · 290 Bildschirme
おれは敬二郎よりももっと紀久ちゃんを想っているのだから。子供の時分に、一緒に遊んでいたときのことを思うと、おれ紀久ちゃんを酷い目に遭わせるようなことは決して言えねえ。安心していろ」
正勝はそう言って、静かに微笑んだ。紀久子は身体の箍が全部緩んだような気がしながら、目が熱くなってきてなにも言うことができなかった。正勝は微笑みながら繰り返した。
「本当になにも心配しなくていい」
「どこかへ行って困ったら、いつでもわたしがお金を送ってあげるわ」
「金なんかいらないよ」
正勝はそう言って、その長い綱を身体に巻きつけたまま、静かにそこを歩き出した。
「正勝ちゃん! どこへ行くの?」
紀久子は怪訝そうに訊いた。
「心配しなくてもいい」
正勝は振り向きもしないで歩いていった。
「そんなものを巻きつけて。でも、どこへ行くつもりなの?」
正勝はもう返事もしなかった。彼はズボンのポケットに両手を突っ込んで、厩舎の横から放牧場の雑草の中へと、静かに歩み消えていった。
2
闊葉樹の原生林は紅や黄の葉に陽が射して、炎のように輝いていた。
正勝は陽にきらきらと輝きながら散る紅や黄の落ち葉を浴びながら、綱を身体に巻きつけたまま熊笹藪の中を歩いた。