Japanische Klassiker mit Furigana
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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
Lesen Sie 新・水滸伝 (しん・すいこでん) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 684.899 Zeichen · 1374 Bildschirme
で彼は、老父の顔すら見ず、宋清にだけ後日を約して、すぐ元の道へ走りもどった。走りながらもわが愚を責めた。なんたる浅慮な我意を押し通して無駄な日数を費やしたことか、と。
汗は衫(上着)のうえにまで滲み出ている。道は暗い。不気味な月がぼやっとあった。一体どれほど馳けて来たろうか。しかもそのうちに大勢の足音もして。
「――宋江、待てえっ」
彼は何度ものめッた。そして心臓も口から吐いてしまいそうな呼吸だったが、恐怖に突かれ通しだった。喘ぎに喘ぎながら急いでいた。だが後ろでは彼を呼ぶ声が、いよいよ近くなってくる。
「南無三……」
薄雲が払われたのか、こつねんと、おぼろな視界が白く月の下に見えた。なんと、彼が迷いこんだ所は、俚俗“還道村”という幾重もの丘陵にかこまれた樹林の奥であったのだ。
「野郎、もう逃げ道はねえはずだ」
追ッついて来た四、五十人の捕手は、バリバリと木立の中へ踏み込んで捜査に散らかった。――宋江は生ける心地もなく、ふと目の前に見えた古廟の扉へ、双肩をぶつけてころがりこんだ。
蝙蝠か、むささびか、目をかすめた物がある。いや追手の松明もピラピラ廟の外を走り廻っていた。