Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんばし
日本橋
泉 鏡花
Lesen Sie 日本橋 (にほんばし) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.697 Zeichen · 177 Bildschirme
「お孝……」
と呼ぶと、
「あい。」と声の下で返事して、階子を下りるのがトントンと引摺るばかり。日本の真中に、一人、この女が、と葛木は胸が切ったのであったが。
暖い閨も、石のごとく、砥のごとく、冷たく堅く代るまで、身を冷して涙で別れて……三たび取って返したのがこの時である。
お孝は、乱書の仮名に靡く秋風の夜更けの柳にのみ、ものを言わせて、瞳も頬も玉を洗ったように、よろよろとただ俯向いて見た。
「済まないがね、――人形を忘れたから。」
「はい。」
と清く潔い返事とともに、すっと入ると、向直って出た。乳の下を裂いたか、とハッと思う、鮮血を滴らすばかり胸に据えたは、宵に着て寝た、緋の長襦袢に、葛木が姉の記念の、あの人形を包んだのである。
ト片手ついたが、欄干に、雪の輝く美しい白い蛇の絡んだ俤。
「お怪我の無いよう……御機嫌よう。」
とはらりと落すと、袖で受けたが、さらりと音して、縮緬の緋のしぼは、鱗が鳴るか、と地に辷って、潰島田の人形は二片三片花を散して、枝も折れず、柳の葉末に手に留んぬ。
「清葉さん、――さようなら。」
カタリと一幅、黒雲の鎖したような雨戸が閉って、……