Japanische Klassiker mit Furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme
しかしなに一つよくはならなかった。新しく建てる家はごく手軽にすべしとか、贅沢な品の贈答はならぬとか、祝儀や不祝儀の宴会はいけないとか、富籤は禁ずるなどという、緊縮の布令が出るばかりで、むしろ不況の度はひどくなっていった。
――焼け跡の木々にも新芽がふくらみはじめた。きみの悪いくらい暖かな日があるかと思うと、冬でもかえったように、とつぜん気温が下り、烈しい北風がいちめん茶色になるほど埃を巻きあげたりした。或る日、おせんが表で子供を遊ばせていると、長半纏にふところ手をした男が通りかかり、こっちを見て吃驚したように立停った。
「おや、おめえおせんちゃんじゃあねえか」
おせんは訝しげに顔をあげた。
「やっぱりおせんちゃんか」男は親しげに寄って来た、「――よくおめえ無事だったな、てっきり死んじまったとばかり思ってたぜ、おら正月こっちへ帰ったんだが、近所の知った顔にまるっきり会わねえ、おめえもやられたと思ってたんだが、なにはどうした、爺さんは、やっぱり無事でいるのかい」
おせんは子供を抱きあげ、不安そうにじりじりと戸口のほうへさがった。
「なんだえそんな妙な顔をして、おらだよ、山崎屋の権二郎だよ、忘れたのかい」