Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme

Aozora Bunko

九

ができる、そしてもう二度と離れることはないだろう。おせんの嗚咽はなお暫く続いていた。

その翌朝おもんは血を吐いた。柳河岸から帰ったおせんがなかなか寝つかれず、明け方の光がさしはじめて、ようやくまどろみかけたときのことだ、異様な声でとつぜん呼び起こして、半に三分の一も吐き、そのまま失神してしまった。もちろん二十余日の過労が祟ったのである、――医者はすぐに来て呉れたが、どう手の出しようもなかったし、むしろそうなるのが当然だという態度で、二三の手当となにやら知れぬ粉薬を置いて帰った。おもんは二度と起きられない病床についたのであった。

九

松造が来て八百屋の店を出さないかとすすめたのは、おもんが倒れて十日ほどのちのことであった。考えるまでもなく、重い病人を抱えてそんなことは出来ない、いずれおちついてからと云って断わった。――おもんはそれから三十日あまり寝て亡くなった、病気してからひとがらの変ったおもんは、顔つきも穏やかに美しくなり、いつも眼や唇のあたりに微笑をうかべていた。

「あたしは仕合せだわ、おせんちゃん、本当ならどこかの空地か草原ででも死ぬところだのに、仲良しのあんたに介抱されて、わがままの云いたいだけ云って死ねるんだもの、考えると勿体なくて罰が当るような気がするわ」