Japanische Klassiker mit Furigana
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やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme
七
そんなことは、有るわけがない、きっとなにかの間違いである、どう考えても本当とは思えない――だってあたしがいるじゃないの、あたしはちゃんと待っていたんだもの、そしてあんなに固く約束したんだもの、あたしを措いて庄さんがお嫁をよそから貰うわけがないじゃないの。同じことを繰り返し思い耽っていたが、やがてぼんやり立っている自分を人が見るのに気づき、慌てて引返して家へ帰った。
「おもんちゃん、あんた済まないけれどそのままでもうちょっと幸坊の相手になって呉れない、あたし急いでいって来るところがあるんだけれど」
「ええいいわよ、このとおり温和しく遊んでるわ」
「ここへ飴を出して置くからぐずったらやって頂戴、すぐ帰って来るわね」
「こっちは構わないわよ、悠くりいってらっしゃいな」
おせんはそのまま家を出ていった。
七
森田町からはいって三味線堀についてゆくのが、阿部川町へはいちばん近い道である。秋とはいってもまだ日中は暑かった、乾いた道は照り返してぎらぎらと輝き、あるかなきかの風にも埃が舞立つので、おせんの足は忽ち灰色になってしまった。なにか口のなかで呟いている、ときどきそう気がついたけれども、なにを呟いているのか自分でもわからないし、頭が混乱して考えを纏めることもできない。