Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

Lesen Sie 柳橋物語 (やなぎばしものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 104.300 Zeichen · 202 Bildschirme

Aozora Bunko

二

て、砥石に向っていた。

「おそくなって済みません」おせんはそう声をかけながら、店へはいろうとしてふと気がつき表に掛けてある看板を外した、雨かぜに曝されてすっかり古びているが、まん中に御研ぎ物、柏屋源六と書き、その脇へ小さな字で、但し御槍なぎなた御腰の物はごめんを蒙ると書いてある、おせんは看板の表の埃を払いながらいった、「……このあいだ独活があったのでいってみたのだけれど、きょうはあいにくどこにもないのよ、おじいさん、かんにして下さいね」

「だから有合せでいいって云ったんだ、つまなんぞどうでも秋鯵の酢があればおれは殿様だぜ」

「それではすぐお膳にしますからね」そしておせんはもう暗くなった台所へはいっていった。

二

庄吉はその明くる日、たのんだ研ぎ物を受取りかたがた別れに来た。源六には「三年ばかり上方で稼いで来る」と云っただけで精しい話はしなかった。おせんには達者でいるようにと云い、おもいをこめた眼でじっとみつめながら、まるで泣いているような微笑をうかべた。そしてその日午後、品川のほうにある親類の家から旅に立つ筈で、茅町の土地を去っていった。

おせんは四五日ぼんやりと、気ぬけのしたような気持で日を送った。