Japanische Klassiker mit Furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lesen Sie 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) von 橘 外男 (たちばなそとお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.788 Zeichen · 299 Bildschirme
私が出て来たと見ると急いで扉を開いた運転手に手を振って車は家へ帰したが、さてどこへ行こうというあてどもなかった。ただ足に任せて行き当りバッタリ歩道を歩いていたが、それもどこを歩いているのかサッパリ見当が付かなかった。ただ歩いて歩いて歩き廻っていた。途中で歩き草臥れて一、二度珈琲店へ寄ったような気もすれば、そうでなかったような気もしていた。
「もしもし」と背後から呼び留められて、
「お客様お代金を頂戴いたします」と請求されたような気もすれば、それもまた私ではなくて誰か外の人であったような気もしている。ともかく白昼の市街を歩みながら、すべてが白痴のように朦朧とした感じであった。電車通りを踏み切って自動車を避けて轢かれもせずに歩いていながら、眼前のことは瞬時に頭から抜け去って、今自分がどこをどう歩いたか、自動車がどこをどう通ってどっちの方面へ曲ったかを記憶しなかった。ただ頭の中で旋風のように渦巻き返っているのは、どういう風にして妻に復讐をしてくれようかとそのことばかりであった。歩いても歩いてもどこまで行っても、絶えず嘲ら笑いを泛べたドローレスの顔ばかりが眼前にちら付いている。