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Japanische Klassiker mit Furigana

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じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lesen Sie 次郎物語 (じろうものがたり) von 下村 湖人 (しもむらこじん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.443 Zeichen · 398 Bildschirme

Aozora Bunko

自分は、いったい、自分にとってどんなたいせつな願いを生かそうとしているのだ。どんなたいせつな願いを生かそうとして、兄に対してあんな返事を書いたというのだ。――

道江の生涯の幸福のために?――なるほど、自分は心のどこかで、そんなことを考えていないのではない。だが、それがはたして自分の真実の願いだと言えるのか。道江と恭一との幸福な生活を将来に想像して、自分は今現に心の底からの喜びを感じていると言えるのか。正直のところ、心の底には、喜びどころか、むしろ呪いに似た気持ちさえ動いているのではないのか。――

あらゆる苦悩にたえて、そうした呪いに似た気持ちを克服するのだ、と、そう自分に言いきかせて、自分をはげますことに、ある誇りを感じていないのではない。だが、そうした誇りに生きることが、自分にとってはたしてのっぴきならぬ願いなのか。その願いのまえには、どんな他の願いも犠牲にされていいほど自分にとって高価な願いなのか。もしそれが、それほど高価な、それほどのっぴきならぬ願いなら、兄からのつぎの手紙を期待するような今の気持ちは、いったいどこから湧いて来るのか。心のどこにそんな余地があり、そんなすき間があるのか。