Japanische Klassiker mit Furigana
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わたらせがわ
渡良瀬川
大鹿 卓
Lesen Sie 渡良瀬川 (わたらせがわ) von 大鹿 卓 (おおしかたく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 280.528 Zeichen · 557 Bildschirme
あちらこちらに嗚咽の声がたかまりだした。
「……いいえ、それは、決して激甚地に限ったことではございません。このまま鉱業も停止されず、鉱毒の流れこむことが止まなかったならば、早晩誰のうえにも降りかかってくる運命でございます。どうか、これから村々をお廻り下さいまして、哀れな乳呑児の泣き声をおききになって下さい。母親たちが満足な食物も食べられませんから、乳がたりません。乳がたりないから、乳呑児は満足に泣き声を出す力さえないのでございます。その唇は、出ない乳首を吸うために腫れあがっております。親たちは自分の饑さなどは何日でも忍びもしようがと、泣く児をかかえて一緒に泣いているのでございます。焼野の雉子、夜の鶴とか……」
稲村は泣き咽せて、言葉を継ぐことができなくなった。その前に黙然と突立っている谷の両眼からも光るものが溢れでていた。尽きることをしらぬもののように、あとから後からと頬を伝い落ちていた。だが、谷はそれを拭おうともせず、不動の姿でいつまでも両手を垂れ、その指先がかすかに震えていた。この異様な情景の上で、空をとざす暗雲が、舞台の廻るようにしずかに動きだしていた。