Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
彼は、非常に旅行好きだと常に人に話しているとおり、暇があると、旅へ出かける癖があった。尤も、上方から下って来た目的が、龍山公の血統さがしの件もあるが、表面は、東都遊学というのであるから、誰も、怪しむ者はない。
史蹟に、名所に、旅行癖はそうした人にはありがちである。ことに、彼は江の島の海色がまたなく好ましいといって、相州附近からあの島へは、度々、旅をしている。
ちょうど、春先。湘南は、梅もはやい。
遊心をそそられた彼は、この四、五日まえから、鎌倉江の島めぐりをして、ちょうど、戸塚まで帰って来たところだった。――江戸の方で、関り合いになった今度の事件も、下手人が、江漢老先生の息子という点から、奉行もやり難いところが多く、おまけに、すべての秘密をのみこんでいたらしい富武五百之進は自刃してしまうし、かんじんな花世と郁次郎は逃走してしまったので、ここ三月ばかり、事件は、一頓挫のかたちになってしまっている。
「旅もしてみるものだな」
と、羅門の頬には、意外な拾いものに欣ぶ笑みが、波紋のように時々泛いた。
その翌日、七里ヶ浜をいそいで、江の島への渡舟に乗った彼が、島へ上がるとすぐだった。