Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
「旦那」
と、呼ぶ者がある。
ふり返った羅門はすぐに、
「鮑か。鮑はいらん。帰りに買ってやる」
と、すたすた歩きだした。
「羅門先生」
「や?」
「私です」
と、鮑売りの漁師は、かぶっていた磯くさい手拭をとって、むじゃむじゃな髯の中で笑った。――郁次郎を捕えぬうちは奉行所へ帰ってくるな、と酷い上役の東儀からいわれた同心の加山耀蔵だった。
さすが炯眼な羅門も、彼の巧みな変装にはいッぱい食って、思わず、恥じたいろをした。
「おう、加山か」
「羅門先生には、きのう、江戸表の方へ街道をお急ぎとお見うけいたしましたが、どうして、お戻りなされたので」
「貴公こそ、どうしてここへ来ているのだ」
「はい、拙者は、あれ以来、奉行所へ戻らずに、遂に、郁次郎の足跡を見つけて以来、彼の影を離れたことはありません」
「では、郁次郎がこの島へ来ていることを、貴公はもう知っているのか」
「そのために、早速、こんな姿に化けているわけです」
「ご熱心だな」
と、言ったが、羅門には、ちょっと、自分の功をさらわれたような不快さが、軽く走った。
「この島へはいったのは、郁次郎も、自分で自分の墓穴を掘ったようなものだ。