Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

、肚の虫が可笑しがって困りましたよ」

「でも、少しは酷い眼に会ったでしょうが」

「何、これで胸が清々しました。――けれど、どうしてこの同心を、すぐこの場で殺さずに、作兵衛小屋とかへ持って行くのですか」

「そこが、ご家老一流の、細心なところなので」

「じゃ、死骸の始末をするためにですか」

「左様。死骸をこの辺に埋めておいて、万一、強雨の後などに、土中から洗い出されると、ここは叡山道で人通りもあることゆえ、世上へ洩れる惧れがある」

「なるほどネ」

「江戸の上役人が、含月荘の領内で、殺されていたと分ったひには、こいつ、大破綻になりますからな。――そこで、如意ヶ岳の作兵衛小屋へ持って行って、炭焼竈の中で焼いてしまおうというお考えなので」

「それなら、衣類も大小も、みんな灰になってしまうから、世間に分るはずはない」

郷左衛門の細智に感服しながら、玉枝も、一同の後に尾いて、そこから細い山道づたいに、谷一つ彼方の如意ヶ岳へはいって行った。

山の主といわれる炭焼の作兵衛はそこに住んでいた。

作兵衛はもう六十近い老人だが、腰も曲がらず病というものを知らない。楢薪で組んだようなほッたて小屋に住んで、三つの竈で焼く炭は、すべて含月荘の台所へ納まることになっている。