Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

奉行所大激論

胸に叫び、心に誓って、鶉坂をいッさんに、狂者のごとく駈けて出た江漢老先生。加山耀蔵が、車町の問屋場から曳き出した裸馬の背へ、ひらりっととび乗るがはやいか、

「――郁次郎よ、郁次郎よ」

と、わが子の名を呼びつづけながら、夕雲の赤い巷へ向けて、雄々しくも涙ぐましい、父性愛の鞭をつよく、高く、振り上げて行った――。

奉行所大激論

ひらりと、老先生は馬の背から跳び下りた。馬は鼻腔をひらいて、肌に汗をかいていた。

手綱を、奉行所の駒止めに繋ぐとすぐに、老先生は、つかつかと門にかかって、

「――鶉坂の塙江漢、火急、奉行に面談があって罷り越した。門番、門番! ここをたのむ」

と、息を喘いて、激しく叩いた。

今しがた門限の六刻が鳴って、役所の中には、疲れた暮色が沈みかけていた。嵐がぶつかッて来たようなそこの物音に、革袴の番士は、びっくりしたように飛び出して、

「どなたでござるか」

と、訊き返した。

「塙江漢じゃ。はやくたのむ」

「えっ、鶉坂の先生ですか」

「そうだ、早くせい、一刻を争うのじゃ」

「しばらく」

と、言い捨てて、番士は、あわてて奥へ駈けこんで行った。

ちょうど、役宅の一間では、奉行の榊原主計頭、与力の東儀三郎兵衛、そして、羅門塔十郎の三名が、額をよせて、何事か凝議しているところだった。