Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
……あれは皆、おまえのしたことではあるまい。な! 郁次郎」
「父上ッ……」
「む。……言え。明らかに、その冤罪なることをここで言ってくれ」
「駄目です! やっぱり、私が殺したに相違ないんです」
「な、なんだと!」
老先生は、脳心を、打ちのめされたように蹌いて、
「これッ、そちは、狂気いたしたか。長崎で立派に医術の修業を習得して、江戸には、新築の養生所や、やさしい花嫁や、この父や、人間のあらゆる幸福が待っておるのに、それを捨てて、益もない、悪事に走るはずはない。何かの誤解だろう、さ、この誤解を解け、ほんとのことを言ってくれ」
「父上、もう、おたずね下さいまするな。不孝の子を、獄門へ、送って下さい」
「馬鹿ッ、馬鹿。貴様はどうしてそんなばか者になったのだ。今、ほんとの事を言わなければ、後になって、いくら父の名を呼んでも及ばないぞ」
「もう……覚悟をいたしております」
「ええ、親の心子知らず、わしは気が狂いそうだ。まったく、自分の所為だと申すのか」
「すべて、羅門殿と東儀殿へ、申し上げたとおりでございます」
「あ、あ……」
と、老先生は、頭をかかえて、よろよろと、獄壁へ倒れかかった。