Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
「そいつが食わせものだ」
と、老先生は、千吉のことばを切って、
「――分った。あとは現場に当ってみよう」
「では、すぐにお供を」
「イヤ、ちっと待っておくれ」
と、老先生は方丈の窓から、寺の室へ、
「花世、花世」
と、低い声で、呼んだ。
「はい」
と、花世の顔が、すぐに、そこの窓に見えた。
「また一事件もちあがった。わしはすぐに、行かねばならん。最前、頼んだものは、まだ書けぬか」
「書いておきました」
「オオ、これか」
と、窓の間から受け取って、
「舟辰」
「へい」
「千吉にも、申しつけることがある。今日より、向う八十日間のあいだ、この花世どのの一身を、おまえ達ふたりに預けるぞ。命がけで、間違いのないように、守ってくれい」
「…………」
二人は、返辞を忘れていた。
「どうじゃ」
「…………」
「嫌か」
「……不思議だあ」
と、呻くように、二人が、同時に言った。
「なにが」
と、老先生は、彼等の顔つきが、変なのに気がついた。
「なにが、そんなに、不審なのか」
「でも、そのお嬢様は、いつぞや品川沖でふん捕まえて、また、悪党どもに奪り返された、あの玉枝っていう、凄い女と、瓜二つじゃございませんか」