Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

胃液は、もう消化する何物もないのに、まだ主体を生かさんために、胃壁そのものを溶かしはじめた。自壊自給作用である。それは堪らなく不快な嘔吐気と激痛とを発作的に起した。――眼はくぼみ視力は衰退し、爪は白っぽくなって、肉の削げた細い指の先に、一枚一枚、ぽろりと落ちそうについている。

「死んではならぬ! 死んではならない!」

彼は、その一念で、生きていた。

また、栄養なく、ただ剃刀の刃みたいに鋭くなった頭脳の中は、一日一日と、暗黒に空虚に、消えてゆく日のことだけでいッぱいだった。彼は、岩窟の外の光線によって、毎朝、岩壁へ爪の先で深く一筋ずつ印を彫っていた。

「ああ……今日でもう二十二日」

岩壁の暦の筋は、今朝で二十二本になった。

江戸を立った時からの日数を繰ってみると、もう四十日近い時間が空しく、まったく空しく、消えているのだ。

「ええ、どうしよう!」

彼はもだえた。いや、悶える力すらも、今は一刻ごとに、その肉体から失くなって行くのだ。彼は、コツコツと、自分の心臓をたたく死の音に恐怖した。

「俺は生きたい! 俺が生きて、もういちど江戸表へ帰らなければ、老先生は自滅だ。