Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
明月大吟味
あれや、これ、彼の面持は、落着かなかった。
ところへ――
「ご老公に申しあげます。只今、お血統の玉枝様を、お伴れ申して参りました」
と、小笠原家の用人が、それへ来て、うやうやしく両手をついた。
明月大吟味
「オオ、これへ。すぐにすぐに」
と、龍山公は、待ち焦れていた気持を制しきれなかった。ほとんど、他愛がないほど、うれしさを表情して、
「褥を。脇息を」
その位置まで、近侍たちへ、指図した。
やがて、伴われて、楚々としてそこへはいって来たのは、月夜の衣裳には余りに寒い! 白絹の小袖に、白絹のかいどり、帯までが白い――死装束の麗人であった。
ただ黒髪が、ふっさりと、うしろへ垂れたほかは、その頬、その手、雪よりも白く、ちらちらと姿にうごく、月の斑よりも、まだ白かった。すらりと、そこに坐る。
「羅門! 玉枝とは、この女か」
「はっ……左様にござります」
「相違ないか」
「相違ござりませぬ」
「たしかに見よ」
あまり老公が念を押すので、羅門は、形ばかりに、そっと上眼をあげた。
「――たしかに、玉枝様にござります」
「はははは」
と、老公は、何を考えられたか、白髯をゆすぶって、大きく笑いだされた。