Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
椅子に腰をおろすと、金五郎は、しんみりと、述懐するような語調で、呟いた。
新之助がうっかり口を辷らせた「露探」という言葉を、誰か、山下組の仲間が密告しているのである。
(世の中は、むずかしい)
人と人との関係、そのつながり、結びつき、などの複雑さ、人間の外にも、内にもいる「敵」というもの、若さの美しさと危険、これからの生きて行く前途を考えて、唇をしっかりと結んだ金五郎の厚い胸に、いろいろな想念が浮かんだ。
数日が、過ぎた。
また、なにかの波瀾が起るかと思われたが、意外にも、颱風が一過したに似て、平静だった。吉田磯吉が、子分たちを一人残らず引き具して、彦島を退散したためであろうか。
しかし、この彦島での出来事は、歴史的なものといってよかった。その禍根と、影響とは、誰が考えたよりも、はるかに、深く、遠いものとなったのである。
秋の雨が降った。それが、石炭を黒光りさせ、巌流島の横流しになった松を、よみがえらせたように、緑に染めた。晴れると、日ごとに、空も、海も、青の濃さを増す。
或る日の夕方、松野医院に、新之助を見舞に行っての帰途、道具倉庫の横で、金五郎は、マンに、呼びとめられた。