Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
「これは、おマンさん、なんぞ、用かね?」
「ちょっと、ここまで」
金五郎は、普段着のマンが立っている、錨の傍に行った。
もう黄昏れて、煙って来た海上からの風が、冷たい。船も、対岸の門司も、灯をちりばめて、汽笛が、ときどき、海峡の空気をふるわせる。
「金五郎さん」
「うん」
「困りますよ」
「なにが?」
「あなた、方々に、あたしと夫婦になる、というて、いいふらしていなさるらしいけど、自分勝手にきめたとて、あたしは知らないわ」
「そうかね? 困るかね?」
「あたりまえじゃないですか。大迷惑やわ」
「そうかなあ……? わたしは、なにも、いいふらして歩いたわけじゃない。人から――玉井さんも、もう、おかみさんを貰うて、身をかためたら、どうか。……とか、ええ嫁女を世話しようか、とか、いわれるもんじゃけ、そのたびに――いや、結構、わたしは女房貰うなら、谷口マンさんのような女が欲しい、と、いうたまでじゃ。他人の口に移ると、なんでも曲ってしまう。あんたと夫婦になる、って、いいふらすなんて、そんなこと、するわけがない。でも、わたしが、そう思うとることをいうのが、あんたに、そんなに、迷惑かね?」