Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme

Aozora Bunko

……どうじゃ? 新婚旅行のつもりで、道後の温泉に行かんか?」

「そりゃあ、行きたいことは、行きたいけど……」

金五郎は、むっくりと、起きあがった。マンの煙管を取って、自分も吸い、しんみりした語調になった。

「おれは田舎を飛びだしてから、故郷なんて、糞食らえ、と思うとった。それが、どうしたわけか、このごろ、馬鹿に田舎のことが思いだされる。親父や、お袋のことを、夢に見たりする。なんかの機会があったら、いっぺん帰りたいと、考えとったんじゃ」

それは、マンも、同じ思いであった。しかし、口に出しては、いわなかった。

――故郷。

どんなに、いやなことがあったにしたところで、人間の宿命のように、忘れることの出来ない、懐しい心の寄りどころであった。

「それで、今度、お前さえよければ、一緒に、帰ってみようと思う。お前も、あんまり、どん腹になったら、旅が出来まいけ、今のうちがええ。第一、子供の籍のことがある。まさか、若松に腰を落ちつけるなんて、思いもせんじゃったもんじゃけ、寄留もせんですましとった。今のうち、分家して貰うとかんと困る。それに、兄貴から借りた三十円も、大庭親方からの前借りを足して、やっとこさで、出来た。