Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
二人のいる四畳半には、小さな餉台が一つ置いてあるきり、仲居も、簡単な酒肴を運ぶと、気をきかせて、後はよりつかない。窓は明けてあるが、前方は夜の海と島とで、どこからも見られる恐れはなかった。
この一夜のために、深謀遠慮、長期作戦を立てて、隠忍自重して来たお京の張りのある眼は、一層張って、絶対に、目的を達しなければ置かぬという、切なくはげしいものが、みなぎり燃えている。それは、一種、殺気にも似たもので、お京の艶麗な全身から立ちのぼる、妖しい攻撃精神は、今は気ちがいじみたものまでもまじえているようだった。着物の市松模様にさえ、嘗て、安珍を追った清姫の鬼気がただよっている感さえあった。
金五郎は、すっかり、堅くなって、
「お京さん」
「あい」
「すみません」
「なに、謝るの?」
「わたしを、帰して下さい」
「用がすんだら、何時でも。金五郎さん、あたしの一生の願い、かなえて頂戴。約束して頂戴。なんどもいうけど、銭金じゃないのよ。あたしの一念なの」
金五郎は、いよいよ、当惑した顔つきで、尻込みし、
「お京さん、あんたの気持はうれしいんじゃけど、どうも、……なあ」
「どうも――どうって、いうの?」