Japanische Klassiker mit Furigana
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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
Lesen Sie 花と龍 (はなとりゅう) von 火野 葦平 (ひのあしへい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 410.131 Zeichen · 824 Bildschirme
全速力で、陸に向かって、漕ぎだした。
「逃げるのは、早うて、上手じゃのう」
「サツばっかりは、苦手じゃ」
「これぐらい、なんでも、パッパと、やるとええけんどな」
あまりにも、迅速で、整然とした退却ぶりが、われながら、おかしく、仲仕たちは笑いころげた。これも、熟練の結果である。というのは、港では、この種の喧嘩が、日常茶飯事のごとくになっていることを、証明するものに外ならなかった。
負傷者だけが、仏頂面をしている。喧嘩のはげしかった割りに、大きな怪我人はなかった。手拭や、シャツを破って、応急手当をほどこしている。巨漢の助役は、青い顔をして、船底に、横たわっているが、死んだように、元気がない。
壇ノ浦の方角にあたる東の空に、太陽がのぼって来た。真紅である。昨夜からのどんよりとした雲の中に、くっきりと、輪郭を見せている。
舳に腰をおろしている金五郎は、むっつりした顔で、膝をかかえていた。スコップでどやされた脳天がずきずきし、身体の節々が痛い。金五郎は、無性に、腹が立ってたまらない。
(仕事に勝ちさえすれば、喧嘩をせずにすむと思ったので、先に段取りしに行ったのに、勝っても、負けても、喧嘩か)