Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
と云いながら、火鉢の上の銚子を取った。
「昔は大阪の天満橋の橋詰から淀川通いの船が出た。その船宿のあった所なんだね」
「はあ、そうなんですか、それで『一と夜をあかす八軒家、雑魚寝を起す網嶋』ですか」
「地唄と云う奴は長いのは眠くなるばかりであまり感心しないもんだ。やっぱり聞いていて面白いのは、このくらいの長さの唄物に限る」
「どうです、お久さん、何か今のようなのをもう一つ、………」
「なあに、これのは一向駄目なんでね」
と、老人は傍から引き取って、
「年の若い女がやると、唄が綺麗になり過ぎていけない。三味線にしてももっときたなく弾くようにって、いつも云うことなんだけれど、その心持が呑み込めないで、まるで長唄でも弾くような気でいるんだから、………」
「そないお云やすなら、あんた弾いてお上げやすな」
「まあ、いい。もう一つお前がやって御覧」
「かなわんわ、わてエ。………」
お久は甘える子供のように顔をしかめて、つぶやきながら三の絃を上げた。
全く彼女の身になったらば口やかましいこの老人の伽をするのも大概ではなかろう。老人の方では眼にも入れたいほど可愛がって、遊芸の事、割烹の事、身だしなみの事、何から何まで研きをかけて、自分が死んだら何処へなりと立派な所へ縁づけられるように丹精をこめているのだけれど、そう云う時代おくれの躾が若い身空