Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
「奥様によろしゅう云うとおくれやす」
朝の八時頃、神戸行きの船が客を乗せている桟橋のところで、要は二人の順礼姿と袂を分つことになった。
「どうぞお気をおつけなすって。―――いつごろお宅へお帰りになります?」
「さあ、―――三十三箇所を残らず廻っちゃあ大変なんで、いい加減にするつもりだが、―――とにかく福良から徳島へ渡って、それから帰ります」
「お土産は淡路人形ですな」
「うん、そう。そのうちに是非京都へ見に来て貰いましょう、今度こそいいのを手に入れるから」
「ええ、ええ、いずれにしても月末時分に一ぺんお邪魔に出るかも知れません、ちょっとあの辺についでもあるんです」
岸を離れて行く船の上から、要は陸に立っている二人の方へ帽子を振った。
迷故三界城
悟故十方空
本来無東西
何処有南北
―――笠の四方にそう筆太に記してある文字が、だんだん小さく読めないようになる。お久がしきりに杖をかざして帽子に答えているのが見える。ああして笠を被った姿を遠くから眺めたところでは、三十以上歳が違ってもそれこそ「本来東西なし」で、いい夫婦づれの順礼のようではないか。―――要はそんなことを考えながら、やがてかすかな鈴の音をあとに立ち去って行く二人のうしろかげを見送っていた。