Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

「はるばると運ぶ歩みは頼もしや法の華さく寺をたずねて」と、ゆうべ宿の主を師匠に、二人が一生懸命に稽古していた御詠歌の文句が思い出された。老人は昨日、これとお経の読みかたとを習うために惜しいところで妹背山の芝居を切り上げて、九時から十二時近くまで熱心に教わっていたので、要もお附合いに節をおぼえてしまったのである。彼にはその歌の節廻しと、白羽二重の手甲に同じ脚絆を穿いて、上り框で番頭に草履の紐を結んで貰っていたお久の今朝のいでたちとが、かわるがわる心に浮かんだ。最初はほんの一と晩のつもりで附いて来たのが、二晩になり三晩になったのは、人形芝居が面白かったからではあるが、かたがた老人とお久の関係に興味を感じたせいでもある。歳を取ると、なまじ理窟が分ったり神経が働いたりするような女は、うるさくて厭になるのであろう。やはり人形を愛するように簡単に愛し得られる女がいいのであろう。要は自分にその真似が出来ようとは思わないながら、何のかのと物の分った顔をして年中ごたごたをつづけている自分の家庭を顧みると、人形のような女を連れて、人形芝居のような扮装で、わざわざ淡路まで古い人形を捜しに来る老人の生活におのずからなる安楽境のあることが感ぜられて、あんな心持になれたらばとも思うのであった。