Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
「電話の模様じゃあ話がなかなか手間が懸るんじゃないんですかね」
要はひそかに老人よりもお久の意見を聞きたい気がした。
「何ぞ本でも持って来まひょか」
「有り難う、………お久さんはどんな物を読むんです?」
「なんやかや草双紙みたいなもん持っておいでてこれ読めお云やすけど、そんな古臭いもん読まれしません」
「婦人雑誌はいけないんですか」
「あんなもん読む暇あったら手習いせえてお云やす」
「お手本は?」
「柳春帖」
「柳春帖?」
「それから池凍帖、―――お家流の本どす」
「なる程。―――それでは何か、その草双紙でも拝借しましょう」
「名所図会はどうどす?」
「そんなものがいいかも知れない」
「そしたら彼方へおいでやすな、離れの方にもうちゃんと支度しとおすえ」
廊下づたいに、お久は先へ立って行って、茶の間の水屋の前を通ると、隣りの六畳の間の方の襖を明けた。暗いのでよく分らないが、中には蚊帳が吊ってあるらしく、まだ戸締りのしてない庭からすうッと流れ込む冷めたい空気に萌黄の麻の揺られるけはいが察せられる。
「風が出て来たようやおへんか」
「急にひいやりして来ましたね、もう直き夕立がやって来ますぜ」