Japanische Klassiker mit Furigana
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たでくうむし
蓼喰う虫
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme
暖簾を垂らした瓦燈口に紅殻塗りの上り框、―――世話格子で下手を仕切ったお定まりの舞台装置を見ると、暗くじめじめした下町の臭いに厭気を催したものであったが、そのじめじめした暗さの中に何かお寺の内陣に似た奥深さがあり、厨子に入れられた古い仏像の円光のようにくすんだ底光りを放つものがある。しかしアメリカの映画のような晴れ晴れしい明るさとは違って、うっかりしていれば見過してしまうほど、何百年もの伝統の埃の中に埋まって佗びしくふるえている光だけれども。………
「さあ、どうどす、お腹空いてましたらたべとおくれやす、ほんまに味のうおすけれど、………」
幕が終るとお久がそう云って重箱の物をめいめいに取ってくれたが、要はまだ眼にちらついている小春やおさんのおもかげに名残りを惜しまれる一方、老人のお談義が直きに例の「鬼が栖むか蛇が栖むか」へ落ちて行きそうな形勢なので、幕の内を摘まむあいだも気が気でなかった。
「それではあの、戴き立ちで甚だ勝手なんですが、………」
「もう、お帰りやすか、ほんまに」
「僕はもっと見ていてもいいんですが、やっぱりちょっと松竹座へ行って見たいんだそうですから。