Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 蓼喰う虫 (たでくうむし) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 110.066 Zeichen · 216 Bildschirme

Aozora Bunko

………」

「そらなあ、奥様」

と、取りなすようにお久は云って、老人と美佐子とを半々に見た。

二人はそれをいいしおに、次の幕の口上が始まりかけたのを聞きながら、廊下までお久に送られて出た。

「あんまり親孝行にもならなかったわね」

道頓堀の夜の灯の街へ吐き出されたとき、美佐子はほっとしたように云って、それには答えず戎橋の方へ足を向けかけた夫を呼んだ。

「あなた、そっちじゃあないことよ」

「そうか」

と、要は引っ返して日本橋の方へ、こころもち急ぎ足で行く彼女のあとに追いつきながら、

「いや、あっちへ行った方がいい車が拾えると思ったんだ」

「もう何時?」

「六時半だよ」

「どうしようかしら、………」

妻は袂から手袋を出して、それを篏めながら歩いていた。

「行くならおいでな。行って行けないと云う時間でもない。………」

「此処からだと、梅田から汽車で行った方が早いでしょうか」

「早いことを云やあ、阪急で行って上筒井から自動車の方がいいだろう。―――しかしそうすると、此処で別れてもいい訳なんだな」

「あなたは?」

「僕は心斎橋筋をぶらついて帰る」

「じゃあ、………もしか先にお帰りになったら、十一時に迎えに出ているように仰っしゃって下さらない? 電話をかけるつもりだけれど」