Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
このあたりに多い瓦焼きの土採り場や植木屋の花畑など、どこという嫌いなく突っ切って、やがて、目ざす家の裏手から、灯かげの洩れる中二階の気配をうかがいすます。
裏の水口も表の戸も、固くとざしてあって、節穴から覗いてみても、万吉の穿物まで用意ぶかく隠してあった。けれど、耳を澄ませば、きわめてかすかな話し声が中二階でしていることはたしかである。
「いるな」
「いる」
「では……」
目と目が険しくうなずきあう。
シトシトとその人数、遠く離れてしまったきり、あとはあたりにその影を見せない。
ややしばらくたつと、中二階から行燈をさげて、お吉が階下へ降りてきた。
土間へ降りて、細目に戸を開けた。
そッと顔だけ出して、かれがあたりを見廻した時も、どこにも怪しい人影も気配もない。
「――じゃお前さん、またこれぎりで、当分は別れ別れでございますね」
土間へ穿物をそろえる時、お吉の胸に、ひしと、淋しさが迫った。
「ああよ」
万吉は、わざと、銭湯へでも行くように口軽く、
「しばらくは帰らねえ」
「ずいぶん、体だけは、達者にして下さいね」
「心配するなってことよ。それよりゃ、てめえの頭痛もちでも癒すがいい、灸でもすえてな」