Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme
その手のひまをながめて、お米は少し気が休まったように話しかける。
「あなたのおいいつけを守って、私もいよいよ明日は阿波へ帰ります」
「…………」
弦之丞はうつむきながら、膝のわきを探っていた。ゆうべ一晩中水に浸しておいて日蔭干しにした奉書紙が、綿のように揉んである。
かれはそれを掌にとって、軽く、刃を噛ませた。
指を切りはしまいかと、お米は女らしく危ぶみながら、
「あなたは?」といった。
「拙者も」
右手の刀をしごき、あざやかに拭き抜いて、
「――明日は大阪を立つつもりじゃ」
「すると、やはり一緒の船でございますね」
それには答えず、鞘をよせて音もなく刃を納れると、階下から梯子のキシム音がして、
「お客様」
と、亭主の顔が暗い中に伸びて。
「この間も見えた四国屋のお使いが、ちょっとお顔を貸して貰いたいといって、裏に待っておりますが」と、いって降りた。
救われたように後について立とうとすると、お米は急いで、
「あの、弦之丞様」と側へすがった。
「船はご一緒でも、私には宅助といううるさい者が付いていますし、阿波へ行っても、また落ちあえるまでは、しばらくお別れでございます」