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Japanische Klassiker mit Furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Lesen Sie 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 261.216 Zeichen · 521 Bildschirme

Aozora Bunko

よく侍というやつ、都合のいい潮時にいさぎよくという言葉で、結尾の責任をのがれるものだが、自身で命を絶つような弱腰では、最初から、ここへ入ってくる資格がない」

と……つぶやいていると、かれの行くてに、いつか、薄いふたつの人影がうごいてくる。

はッ……と思うと、向うも足を止め、老人も歩みを止めた。ザザザザと茅をなでてくる風が、うしろから押すように吹いて通った。

しばらく、うかがいあっているうちに、ふたつの影のうち、ひとりは忽然と、岩の蔭か草むらの中へでも隠れてしまったらしく、やがて、近づいて来た様子の者は、ひとりしか見えない。

龍耳老人も、のそ、のそ、と前へ足を運びだした。そして、双方の間、二、三間まで寄りあった。

で、星明りでも、互いにその姿を明瞭に認めえた筈である。

ことに、先のものは白衣なので、いっそう老人にははっきりと輪廓が見てとれた。その上、白い袖の端や裾に、点々と、血汐らしいものが滲んで見え、白木の杖をつかんでいる。

法月弦之丞であろう!

いち早く、弦之丞が隠したのはお綱という女にちがいない。

こう胸のうちで、龍耳老人、うなずいていた。

おれを何者と思っているだろう? どういう態度でかかってくるだろう。